
ASEAN:ペット市場規模の拡大で日本企業の現地展開が加速
所得の増加や生活スタイルの変化を背景に、東南アジア諸国連合(ASEAN)各地でペットの飼育がブームとなる中、ペット関連の日本企業による現地展開のニュースが目につくようになりました。
ASEAN最大のペット市場規模を誇るタイにあって(*)、同国内の生産能力を持続的に増強しているのは犬猫用おやつ「ちゅ〜る」で有名ないなば食品です。同社は今年、タイ中部サラブリ県の生産拠点で、ウエットタイプのペットフードを生産する第4工場を完成させました。延べ床面積は3万200平方メートルに上り、稼働中の第1~3工場(計2万2500平方メートル)を大幅に上回る規模です。また、29年には1万8000平方メートルの第5工場の完成を予定。5工場が全て稼働した場合の年間出荷額は2600億円(市場売価ベース)が見込まれ、ウエットタイプの単独ペットフード工場としては世界最大規模になります。
タイ以外では、ペットホテル・トリミングサロン「ワンルーク」の運営企業によるフィリピン進出のニュースが話題になりました。日本ペットホテル協会(本社:名古屋市千種区)は8月16日、首都圏のマカティ市で10月に海外初店舗を開設すると発表。日本国内と同様に完全オーダーメイドの個室型ペットホテルを完備させるほか、トリミングについても日本品質の技術・サービスを提供する方針を打ち出しました。23年創業の同社は、日本国内で97店舗を展開中です。昨年は市場調査を目的としてマレーシアのクアラルンプールに駐在員事務所を開設するなど(来年までに同国への出店を計画)、海外進出を積極化する意向を示しています。
*TMBタナチャート銀行は2024年の同市場規模を750億バーツ(約3400億円)と試算
急成長中のインド、ASEAN諸国に資金・技術を提供する立場に
これまでインドは海外から資金や技術を取り込む側でしたが、急成長が続く中で今後は東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国などへ投資・技術供与する立場に取って代わる可能性があります。8月はまさに、それを示唆するような動きがいくつか見られました。
まず、フィリピンがインドから巨額の直接投資を取り付けたこと。フィリピン大統領府広報部(PCO)によると、8月初めにインドを公式訪問したマルコス大統領は、デジタルインフラや再生可能エネルギーなどの分野に対する4億4600万米ドルの投資確約を得ました。潜在的な投資規模は最大で58億米ドルに上る見込みのため、実現すればフィリピン経済に多大の恩恵をもたらすはずです。
また、インドが得意とする原子力発電の分野でシンガポールと協力する可能性も強まっています。シンガポールのガン・キムヨン副首相兼貿易産業相は8月13日、訪問先のインドでシンガポールメディアの取材に対し「将来的に原子力発電を導入する選択肢もあり、インドの原子力発電の経験から学ぶことができる」とコメントしました。シンガポールは現時点で原子力発電の計画を正式決定していないものの、小型モジュール炉(SMR)などの導入を検討しているとの見方があります。20基以上の原子炉を保有するインドは、クリーンエネルギーへの移行の一環としてSMRの開発を進めているため、両者の思惑が一致した場合は技術提携が実現するかもしれません。
東南アジア各地で蓄電池ビジネスの立ち上げ相次ぐ、再エネ普及に寄与
東南アジア各地で蓄電池ビジネスへの投資が相次いでいます。7月では、ベトナム大手鉄骨メーカーのダイズン(Dai Dung)グループが国内外5社のコンソーシアム(企業連合)を組成し、ホーチミン市に蓄電池工場を建設すると発表。8億5000万ドル(約1280億円)を投じて、産業用・民生用の蓄電池を製造する計画を明らかにしました。第1期の年産能力は5ギガワット時(GWh)に上る見通しです。同プロジェクトにはダイズンのほか、地場ゼネコン大手の第1建設総公社、地場鉄鋼最大手のホアファット・グループ、二次電池電力貯蔵システム(BESS)事業を手掛ける米系のスマートテック・グループ・ベトナム、中国国営の中国建築第八工程局が参加します。
またインドネシアに隣接する東ティモールでは、日本の大手商社が太陽光・蓄電池事業の合弁プロジェクトを立ち上げました。伊藤忠商事はフランス電力公社(EDF)と共同で、蓄電池を併設した太陽光発電所を建設すると発表。電力のほぼ全量を輸入ディーゼル燃料に依存する同国で、再生可能エネルギーの導入を通じた発電コストの低減と温暖化ガス排出削減に貢献していく考えを示しました。太陽光の出力は72メガワット(MW)、蓄電池は出力36MW、容量36メガワット時(MWh)に上る見通しです。
蓄電池と言えば電気自動車(EV)が頭に浮かびますが、再エネを普及させる上でも重要な役割を担います。日照時間によって発電量が著しく変動する太陽光発電の場合、需給のアンバランスが見込まれる際に電力系統に送る容量が制限される(発電したにもかかわらず無駄に棄てられる)恐れがあるのですが、この部分を蓄電池に貯め込むことで「棄電」問題が解決されるわけです。東南アジア各地で再エネ導入の機運が高まるにつれ、蓄電池ビジネスへの投資は今後ますます増加していくことが予想されます。