
ベトナム:トランプ一族企業がハノイ近郊で大規模ゴルフリゾート開発、貿易交渉の円滑化に一役
トランプ米大統領の一族企業「トランプ・オーガニゼーション」がベトナム首都ハノイの近郊でゴルフ場を中心とした複合施設プロジェクトの起工式を行いました。地場の不動産企業キンバック・シティと共同で手がける同プロジェクトは、投資総額が約15億ドル(約2150億円)に上る巨大事業となる見通しです。起工式にはトランプ・オーガニゼーションのエリック・トランプ副社長(トランプ大統領の次男)が駆けつけたほか、ベトナム側からはファム・ミン・チン首相が出席しました。両国の大物が顔をそろえたことを踏まえ、政府系ニュースサイトは「ベトナムと米国の包括的な戦略的パートナーシップを象徴する」と同プロジェクトを絶賛しています。
折しもベトナムは、米国との二国間貿易協定に関する第2ラウンドの交渉を開始したばかりとあって、トランプ一族企業の大規模プロジェクトがもたらす効果に期待が高まる状態。同プロジェクトが貿易交渉の円滑化に資するのかどうか、今後の行方が注目されます。
タイ:生産拠点シフトは双方向か、対内誘致が進む一方で日本企業に「本国回帰」の動き
東南アジアの生産ハブを目指すタイでは、中国など海外のメーカーによる工場建設が相次ぐ一方、日本企業の一部で生産拠点を本国に回帰させる動きが見られます。
特にタイ進出を加速させているのは、米国の制裁を回避しようとする中国の自動車関連メーカーです。米中貿易摩擦が表面化した2018年からは、自動車部品を手がける中国企業の生産拠点シフトに拍車がかかる状態。市場調査会社マークラインズやタイ政府などのデータによると、自動車部品分野の中国系タイ企業数は25年3月時点で165社に上り、17年末の3倍を上回りました。この流れは、今後も途絶えることはないと予想されます。タイは米国への完成車輸出が少ないため、タイヤなど一部製品を除けば、トランプ政権による関税の影響が限定的と見込まれているためです。
一方、タイへは日本企業の進出も目立つのですが、このところ本国へ回帰するという逆流現象も見られます。最近のニュースでは、アルミフレーム大手のSUS(本社:静岡市駿河区)による工場移転が話題になりました。SUSは今月、タイ北部ランプン県の工場で手がけてきた機械加工品の生産について、静岡県掛川市に新設した工場にシフトさせると発表。14年から進めている「国内生産回帰」の一環として機械加工品の生産を移管するほか、制御・駆動機器などの製造工程も集約する方針を打ち出しました。タイで生産コストが上昇していることに加え、為替変動リスクが顕在化していることなどが要因です。
タイでは今後も、海外企業の進出と本国回帰が混在する状況が予想されます。
中国:上場自動車メーカーの24年業績「二極化」、新エネ系とガソリン系で明暗
中国の上場自動車メーカーの多くが4月末までに2024年12月通期決算を発表したところ、新エネルギー車(NEV)に強い企業が好調な一方でガソリン車主体の企業が苦戦を強いられるという構図が改めて浮き彫りにされました。
NEVを主力とする比亜迪(BYD)は、売上高が前年比29.0%増の7771億245万人民元(約15兆2160億円)、純利益が34.0%増の402億5434万人民元に拡大しました。売上高が初めて7000億人民元の大台を突破し、米テスラを上回る躍進ぶりです。NEV販売台数は41.3%増の427万2145台。中国市場で首位に浮上し、世界のNEV販売台数でもトップに躍り出ました。
また、NEVの販売比率が50%近くまで上昇した吉利汽車も好調。売上高が前年比34.0%増の2401億9427万人民元と過去最高を記録する中、純利益が213.3%増の166億3239万人民元に膨らみました。
一方で上海汽車集団、広州汽車集団、重慶長安汽車など、ガソリン車や合弁ブランド車の比率の高いメーカーは軒並み苦戦。3社ともに減益を強いられ、特に落ち込みが目立つ広州汽車集団は売上高が前年比16.9%減の1077億8380万人民元、純利益が81.4%減の8億2357万人民元という惨状です。
25年も全体の流れに大きな変化はありません。BYDが25年第1四半期(1~3月)に大幅な増収増益を達成する一方、広州汽車集団が赤字に転落するなど二極化が一段と鮮明化しています。