2025.05.13 お知らせ

【今月の話題】アジアの動きを読み解く(2025年5月)

アジア各国・地域の注目の話題をお届けします

タイ:カジノ解禁が迫る、ラスベガスやマカオに続く巨大市場に成長か

インバウンド需要に沸く観光立国のタイで、新たな収益源となるカジノの解禁が視野に入ってきました。これまでは国営の競馬、宝くじなどを除いてギャンブルがほぼ禁止されていたのですが、外国人観光客のさらなる取り込みや雇用・国庫収入の底上げを目指し、このほどカジノ・娯楽施設の建設を許可する法案が閣議決定されたのです。「入場料5000バーツ(約146ドル)と銀行預金5000万バーツ(約146万ドル)の証明が必要」と規定する同法案では、タイ国民の大部分がカジノに行けなくなってしまうため、最終決定権を持つ議会で大幅に修正されることとなりそうですが、同国にカジノが誕生した場合のインパクトは多大です。

 金融グループ大手シティの分析によれば、20歳以上の約半数がカジノプレイヤーになる可能性があり、ラスベガスやマカオに次ぐ世界第3位のギャンブル大国に成長する見通しといいます。また国内経済に与えるメリットも多大で、タイ政府は「カジノ・娯楽施設への新規投資額が1000億バーツ(約29億ドル)に上るほか、外国人観光客数を年間510%増加させ、年間120億バーツ(約35000万ドル)以上の収益を生み出す」と期待しています。

 寺院が立ち並ぶ仏教国のイメージと裏腹に、タイではカジノ解禁に向けた動きが着々と進んでいると言えそうです。

地銀・信金がASEANで積極展開、中小企業の進出ニーズ増加に対応

日本の中小企業による東南アジア諸国連合(ASEAN)域内への進出が増加する中、地方銀行や信用金庫の間でもASEAN拠点を構築・強化する流れが加速しています。今年の動きでは、千葉銀行が1月にシンガポール支店を開設。駐在員事務所を昇格させる形で34年ぶりの新規海外出店を果たし、顧客企業によるASEAN進出や現地展開を支援する体制を整えました。

 域内ハブに位置付けられるシンガポールには、東北最大の地銀も進出しています。七十七銀行は今月、同行初の海外子会社となる現地法人が営業を開始したと発表。日本国内の市場が縮小する中にあって、ASEANやインドで事業展開を目指す顧客に向けてコンサルティングサービスを提供する方針を打ち出しました。

 地銀と同様、中小企業を顧客としている信用金庫にも動きがみられます。信金中央金庫は先月、ホーチミン市に駐在員事務所を開設すると発表しました。ベトナムへ進出する中小企業が増加している状況を踏まえ、現地に新たに拠点を設けて顧客サポート体制を強化する考えです。伸び悩む国内ビジネスを補完するため、地銀や信金はASEANやインドの市場開拓を積極化しています。

中国EV大手BYD:日本の軽自動車市場へ参入、トランプ関税横目にアジア展開加速

トランプ関税の影響で各国メーカーによる対米輸出の停滞が懸念されているのを横目に、電気自動車(EV)中国大手の比亜迪(BYD)がアジア展開を加速させています。早くからアジア市場の開拓に注力してきたBYDは、ほとんど米国に出荷していないという身軽さもあり、ここに来て東アジアや東南アジア諸国連合(ASEAN)の販売戦略を一段と強化する流れです。

 象徴的な動きは、海外勢が成功していない日本の軽自動車市場への参入を決定したこと。日本経済新聞によると、BYDは電池などを内製化し、低コスト生産を強みに日本で軽自動車を販売する計画。独自進化を遂げた軽自動車はガラパゴス諸島の生物になぞらえ、「ガラ軽」とも呼ばれていますが、BYDは海外勢が避けてきた「ガラ軽」にも勝算を見いだした形です。

 また、このところプラグインハイブリッド車(PHV)が見直され始めたタイでは、新たにPHVタイプのピックアップトラック「シャーク6」を投入します。中国から輸入する完成車を今年9月から販売しますが、来年からは現地生産を開始する計画です。

 さらに、自動車市場が拡大し続けるフィリピンでも販売チェーンを大幅に増強します。現地代理店の財閥系ACモビリティーは今月、BYD車の販売店を現在の29店舗から年末までに77店舗まで拡大する計画を発表しました。新車販売の現地シェアは約1%ですが(24年の乗用車販売台数は4780台。うちEV2078台)、販売店の大幅増によりシェアの底上げを図りたい考えです。

 世界中でトランプ関税の嵐が吹き荒れる中にあって、BYDはアジア地域で存在感を一段と高め続けています。

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