
巨大市場のインドネシア:24年スマホ販売が4千万台に拡大、アップルはiPhoneサプライチェーン構築へ
東南アジア諸国連合(ASEAN)で最大の人口を誇るインドネシアは、スマートフォンの販売規模もASEANトップです。米調査会社IDCがまとめた2024年のデータによると、同国のスマホ出荷台数は3年ぶりのプラス成長に転じ、前年比15.5%増の約4000万台に拡大しました。他のASEAN諸国も軒並みプラス転換したものの、インドネシアは規模、伸び率ともに域内をリードしています。
こうした中、先週は「アップルがiPhoneのサプライチェーン構築に向けて、インドネシアで1億5000万ドル(約225億円)の巨額投資を行う」というニュースが流れました。同国内のiPhone販売を巡っては、インドネシア政府が昨年10月、アップルが国内販売要件である40%の現地調達率を満たしていないとして「iPhone 16」の販売を禁止した経緯があります。その後の協議を経て、アップルが巨額投資を行うことを条件に販売許可を取り付けた形です。
アップルは当初、費用負担の大きい現地サプライチェーンの構築を必ずしも望んでいなかったようですが、人口約3億の巨大市場を取り込むために背に腹は代えられなかったと思われます。
ベトナム政府:半導体・AI産業振興で支援拡大、新規R&D投資には最大50%補助も
半導体や人工知能(AI)の投資を呼び込むべく、ベトナム政府が各種支援策を打ち出しています。最近の動きでは、半導体・AIに関連する新規の研究開発(R&D)案件について、初期投資額の最大半分を支援するという政令が今年1月に公布されました。2024年に施行されたグローバル・ミニマム課税(GMT*)の影響で、多国籍企業が税率の低い国への投資に消極的になっている状況を踏まえたものです。国内でR&Dを伴う3兆ドン(約180億円)の投資を計画し、3年以内に1兆ドン以上を実行する場合、R&Dに関する建設費用や設備投資、人材育成などの初期投資について最大50%が補助されます。
また先月は、国内初の半導体チップ製造工場を建設するための支援プログラムも発表されました。2030年末までの生産開始を目指す企業に対し、事業総額の30%、最大10兆ドン(約580億円)の補助金を支給するというものです。ベトナムでは現在、外資系を中心にパッケージングなど半導体の後工程を手がける企業が複数存在していますが、半導体チップを製造するメーカーがない状況。世界的に半導体の需要が高まる中、国内に製造拠点を設置すべく政府が支援に向けて本腰を入れ始めた形です。今後の取り組みが大いに注目されます。
* GMT=多国籍企業が実効税率15%未満の国で利益を得た場合、本来支払うべき税額の差額が本国で課税される制度。
アジアのペットフード市場に注目、インドやタイが急成長中
ペットフード市場と言えば、犬や猫の飼育数が多い北米や欧州がシェアの上位を占めますが、最近はインドや東南アジアでも消費が大きく伸びています。中でも将来性が期待されているのは、世界最大の人口を誇るインドです。ペットフード世界大手の米マースによると、インドではペット数が推定1億匹に上り(うち約3000万匹は家庭内で飼育)、ペットフード市場の規模が約5億5100万ドルと見積もられますが、今後7~8年で18億ドルまで膨らむ見通し。マースにとっても、インドが今後10年以内に販売先の上位5市場に躍り出る可能性が高いとのことです。
また東南アジアでは、タイが有望な市場として期待されています。同国カシコン銀行傘下の総合研究所カシコン・リサーチ・センターによると、タイのペットフード市場規模は2025年に前年比 12%増の460億バーツ(約2040億円)に拡大する見通し。ペット飼育数の増加に伴い、今後も持続的に需要が高まり続けるとのことです。犬と猫の飼育数は21~24年の期間、それぞれ年平均19%、28%のペースで増加。25年はそれぞれ約345万匹、約194万匹に伸びると予想されています(合計では前年比6%増の538万匹に伸びる見通し)。人口14億超のインドには及ばないものの、人口7000万人程度のタイも魅力的な市場に成長中と言えそうです。
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