2025.02.05 お知らせ

【今月の話題】アジアの動きを読み解く(2025年2月)

アジア各国・地域の注目の話題をお届けします

ベトナム:待望のホーチミン地下鉄、数回にわたる延期の末に先月開業

待ちに待ったホーチミン市都市鉄道1号線がついに商業運転を開始しました。ベンタイン市場と市直属トゥードゥック市のスオイティエンを結ぶ総延長19.7キロメートル(14駅)の同路線は、高架部分の17.1キロメートル、地下部分の2.6キロメートルで構成されます。

日本の政府開発援助(ODA)を通じて建設された同路線は、総投資額が43兆7000億ドン(約2700億円)に上り、多くの日本企業がプロジェクトに参画。高架部分を住友商事と第6交通インフラ建設総公社、地下部分を清水建設と前田建設が手がけ、車両を日立製作所が供給しました。

2012年に着工した同プロジェクトは、当初18年の完成を見込んでいたものの、施工会社への未払い問題や新型コロナウイルス禍によって数回にわたり延期された経緯があります。紆余曲折を経て何とか開業に漕ぎ付けた形ですが、慢性的な渋滞に悩まされるホーチミン市の道路事情にあって、交通手段を自家用車から都市鉄道に変換させるという画期的な意味を持つ点に間違いありません。

滑り出しも好調。開業後11日間の利用者数は累計140万人に達し、当初予想を332%も上回りました。ホーチミン地下鉄の開業フィーバーは、成長が続くベトナム経済の好調さを祝っているかのようです。

ベトナム:技能・ソフトの日本企業も現地進出、QBハウスが1号店オープン

「松屋」による昨年の現地1号店オープンで日本の牛丼チェーン大手3社が全て出揃うなど、ベトナムでは日本の大手飲食チェーンや有名アパレル・ブランドの出店が相次いでいますが、これら以外の分野で技能・ソフトのサービスを提供する企業の進出もみられます。

今月のニュースでは、理髪店「QBハウス」を展開するキュービーネットホールディングスがホーチミン市に国内1号店を開業。タンソンニャット国際空港に近い「イオンモール・タンフーセラドン」に出店し、男性8万ドン(約500円)、女性12万ドン(約750円)の料金設定でサービスを開始しました。QBハウスにとってベトナムは、シンガポール、香港、台湾、米国、カナダに次ぐ6番目の海外拠点となります。2024年6月期末時点の海外店舗数は計128店。今後も海外展開を加速させ、29年6月期までに同店舗数を250店まで拡大させる方針です。

また、子供向けに知育アプリを企画・開発するキッズスター(本社:東京都渋谷区)も今年4~5月に完全子会社のキッズスター・ベトナムをホーチミン市に設立します。同社はすでにベトナムで、実在する企業の社会体験が可能なアプリ「ごっこワールド」を展開中(23年8月に現地で配信を開始した同アプリは、昨年末までに累計のダウンロード数が120万回に到達)。現地法人の設立によって、同アプリへの出店企業を募る営業活動を本格開始する計画です。

これまでは飲食やショッピングなどの分野で日本ブランドが人気でしたが、今後は技能・ソフトを売りにした日本企業の現地進出が増え始め、この動きがアジア各地に広がっていくと思われます。

ASEAN:トランプ関税の警戒モード上昇中

米国のトランプ新大統領が掲げる関税政策を巡っては、最大のターゲットとされる中国だけではなく東南アジア諸国連合(ASEAN)でもマイナス影響が懸念されています。特に警戒感が強まっているのはタイです。同国の商務省貿易政策・戦略事務局(TPSO)は20日、タイから米国への輸出品のうち29品目が追加関税の対象となるリスクが高いとの見方を示しました。具体例としてはコンピューター・部品、半導体、集積回路(IC)、携帯電話機、ロール紙対応プリンター、エアコン、変圧器、タイヤ、宝石・宝飾品――などが挙げられていますが、対米貿易黒字が急拡大した電子関連が含まれるだけに経済全体に与えるダメージが懸念されています。こうした中、ダボス会議に出席するためスイスを訪問した同国のペートンターン・シナワット首相は23日、欧州4カ国が加盟する欧州自由貿易連合(EFTA)との自由貿易協定(FTA)に調印しました。欧州地域とのFTA締結は、タイにとって今回が初めて。スイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインとの経済関係を強化することで、トランプ関税によるリスクを少しでも軽減させたい考えのようです。

マレーシアでも、米国による関税のマイナス影響が表面化しています。典型的な例はソーラーパネルです。中国メーカーが制裁回避のためマレーシアに生産ラインを移転しつつ、米国に向けて大量輸出する方式がとられていたのですが、この迂回輸出を問題視した米当局が昨年11月、マレーシアなどASEANから出荷されるソーラーパネルに対する関税措置を発表したのです。すでに中国系ソーラーパネル企業の間では廃業や生産ライン縮小の動きがみられますが、トランプ新政権が今後さらなる制裁関税を課すかどうかが注目されています。こうしたリスクは大なり小なりベトナムなど他のASEAN諸国にも存在するため、域内各国は戦々恐々としてトランプ新政権の動向をウォッチし続けることとなりそうです。

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